わらび餅はまた今度って事になったけど、代わりに作るお菓子の事はまだ何にも言ってないでしょ?
だからキャリーナ姉ちゃんは、それがすっごく気になったみたいなんだ。
「ルディーン、どんなお菓子作るの?」
「あのね、わらび餅みたいな、でもちょっと違う柔らかくってもちもちしたお菓子を作ろうって思ってるんだよ」
僕ね、大豆を見つけた時に醤油だけじゃなくって、これを粉にしてきな粉餅が食べたいなぁって思ったんだよね。
でもさ、イーノックカウのお店を探して回ったけど、もち米どころか普通のお米さえ見つかんなかったでしょ?
だから最初は無理かなぁってちょっと諦めかけてたんだけど、さっき大豆の粉でお菓子を作ろうって話になった時にあるものを思い出したんだ。
「やらかいお菓子って言うと、パンケーキみたいなやつ?」
「違うよ。わらび餅みたいなやつって言ってるじゃないか」
「だって私、わらびもちってのがどんなのか知らないもん。それだけじゃ解んないよ」
あっ、そう言えばわらび餅がどんなものなのか知ってるのって、家ん中じゃ僕とお母さんだけだっけ。
それじゃあ、キャリーナ姉ちゃんも解るはずないよね。
「う〜ん、どういえばいいかなぁ?」
「そんな事考えるよりも、作った方が早いんじゃないかしら?」
だから僕、どうやって言えば解ってくれるかなぁって頭をこてんって倒したんだけど、それを見たお母さんが作った方が早いんじゃないの? って。
「そっか! そしたら食べられるからどんなのかすぐに解るね」
それにキャリーナ姉ちゃんも賛成してくれたもんだから、僕はさっそくお菓子作りを始める事にしたんだ。
「お母さん、ねばねば草の粉と、いっつも作ってくれる揚げ芋あるでしょ? あれのお芋出して」
「あげ鋳物に使う芋も? そんなのでお菓子が作れるの?」
「うん」
僕ね、お母さんが作ってくれる揚げ芋が大好きなんだけど、あれに使ってるお芋が前の世界にあったじゃがいもってのにそっくりなんだ。
だからあれを使えばきっと、芋餅ってのが作れると思うんだよね。
僕が前の世界で見てたオヒルナンデスヨにはアナウンサーって言うきれいなお姉さんがいたんだけど、その人はほっかいどってとこで生まれたんだって。
でね、そのお姉さんがほっかいどにはお芋と片栗粉でつくったお餅があるんだよって、その作り方をオヒルナンデスヨでやってたんだよね。
前の世界の僕はそれを見て食べてみたいなぁって思ったんだけど、そしたらそれを聞いた前の世界のお母さんが作ってくれたんだ。
「オヒルナンデスヨだと焼いて食べるって言ってたけど、前の僕んちだと茹でて食べたんだよなぁ」
でも前の僕って、すっごく体が弱かったでしょ?
だからおっきいのを焼いて食べたら消化ってのが悪いかもしれないからって、ちっちゃく丸めたお団子にしたのを茹でてから小あんこってのかかけて食べてたんだよね。
それがとっても美味しかったもん、
だからきっと、きな粉をかけてもおいしいんじゃないかなぁって、僕、思うんだよね。
「それで、ルディーンこの芋はどうするの? 揚げる?」
「ううん。柔らかくなるまでゆでて、それを潰したのにねばねば層の粉を入れて使うんだ」
「茹でるのね、わかったわ」
お母さんはそう言うとね、早速お鍋の中に水とお芋を入れて茹で始めたんだ。
でね、それが茹で上がるとすっごくあっついはずなのに、お母さんはその皮をするするって全部むいちゃったんだ。
「お母さん、すごい! 熱くないの?」
「熱いわよ? でも茹でたって事はこの芋、潰して使うんでしょ? ならさめてからだと潰しにくくなってしまうのよ」
お母さんはね、お芋をつぶして作るお料理の時は、いっつもこうやってあっついうちに皮をむいちゃうんだって。
だから慣れてるのよって言いながらそのお芋をおっきな木のボウルに入れて、今度は潰し始めたんだ。
「わぁ、あっと言う間に潰れてっちゃうね」
「ねっ、温かいうちだと、簡単に潰れるでしょ? でもルディーン。聞かずに潰しちゃったけど、これでしょかった?」
「うん。だって僕も、皮をむいたら潰してって言うつもりだったもん」
こうやってお母さんが何にも言わなくってもお芋をつぶしてくれたおかげで、僕はすぐに次の作業に移る事ができたんだ。
「あら、そんなにいっぱい入れるの?」
「うん。いっぱい入れないと、もちもちにならないんだって」
僕はね、お母さんが潰してくれたお芋の中にねばねば草の根っこから作ったでんぷんの粉を、ドバドバってすっごくいっぱい入れてったんだよ。
でね、これくらいでいいかなって思ったところで、今度はその粉と茹でて潰したお芋を混ぜ始めたんだ。
「うんしょ、うんしょ」
「これは結構力がいりそうね。ルディーン、変わりなさい。私がやるわ」
でもね、粉と茹でたお芋が混ざるとすっごく重たくなってったもんだから、途中から僕が一生懸命力を入れてもぜんぜん混ざらなくなっちゃったんだよ。
だからそれを見たお母さんが、途中で変わってくれて、
「こんなもんでいいかしら?」
あっという間に、一塊になるまで混ぜちゃったんだよね。
「えっとね、ちゃんと混ざったら、今度はパンを作る時みたいにしっかりと練らないとダメみたい」
「あら、そうなの? 結構力がいるお菓子なのね」
このお芋で作るお餅、ただ焼いて食べるだけだったらこれくらいでもいいみたいなんだよ?
でもほんとのお餅みたいにしようと思ったら、しっかりと練っておかないとダメなんだよね。
だからでんぷんの粉とお芋を混ぜた塊からちょっとだけ分けてもらって、こねこね。
そしたらふわふわでもちもちのとっても柔らかい生地になったから、それをお母さんに見せてあげたんだ。
「ほら、こんな風になったら生地は完成だよ」
「へぇ、あの茹でた芋が、粉を混ぜて練るだけでこんな風になってしまうのね。わかったわ、残りもやってしまいましょう」
生地を練るのは僕でもできたでしょ?
だから今度は僕とお母さんだけじゃなく、お姉ちゃんたちも一緒に4人でこねこね。
そしたらあっという間に残りの生地もふわふわ餅持ちになっちゃったんだ。
「ルディーン、これに大豆の粉をかければいいの?」
「ううん、違うよキャリーナ姉ちゃん。最後にこれをもういっぺん茹でないとダメなんだ」
目の前の生地はそのまんまでも美味しそうなんだけど、これをお湯に入れて茹でると中に入れたでんぷんが固まってねばねばしてくるんだって。
だからそのまんま食べるよりも、茹でたり焼いたりした方がもっとお餅に近くなるんだ。
って事で、練りあがった生地をちょっとずつちぎって、さっきお芋を茹でたお湯の中へ。
でね、それが浮かんできたらお餅は完成。
「これにお砂糖を混ぜた大豆の粉をかけてっと。キャリーナ姉ちゃん、大豆の粉で作ったきな粉餅だよ」
「わぁい。いただきま〜す」
それにお砂糖を混ぜたきな粉をかけてからキャリーナ姉ちゃんに渡してあげると、お姉ちゃんは早速パクリ。
「わぁ、なんか変な食感。でも、おいしい!」
キャリーナ姉ちゃんがそう言ってとっても美味しそうに食べるもんだから、お母さんやレーア姉ちゃんも浮いてきた生地を鍋から掬って、それにきな粉をかけるとおんなじようにパクリ。
「あらホント、きな粉餅とはまた違ったもちもち感だけど、歯にくっつかない分、私はこっちの方が好きかも?」
「つるつるして、もちもちして、とってもおいしいわね」
ふたりともこのじゃがいも餅が気に入ったみたいで、生地をちぎってはお鍋に入れて食べてったんだよ。
それに食べてる途中で大豆のクッキーも食べごろくらいまで冷めたから、それもみんなで試食。
そしたらそっちもすっごく美味しかったもんだから、それからはみんなでクッキーときな粉餅の両方を美味しいねってパクパク食べたんだ。
でも、こんなのをそんなにいっぱい食べたら、夜のご飯なんかお腹に入る訳ないよね。
「おい、今日の晩御飯。ちょっと手抜きじゃないか?」
「ごめんなさい。お腹がいっぱいで、あんまり手の込んだものを作る気が起きなかったのよ」
そしてそのせいでお父さんとお兄ちゃんたちは、量だけはあるけど朝のご飯くらい簡単な夜ご飯を食べる事になっちゃったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
じゃがいも餅って、北海道展のおかげで私の中では茹でて食べる物なんですよね。
でも北海道ではみたらしみたいに、焼いたものを醤油と砂糖を混ぜたものを絡めて食べると聞いて驚いた記憶があります。
なので本場の人からしたら、この食べ方は邪道と思うかもしれませんね。
でもこれ、結構美味しいんですよ?
浮いてきたら食べごろとすぐに解るから焼きすぎで焦がすような失敗をする心配もありませんし、業務用系のスーパーで買って来た小豆をかけるだけですぐに美味しいお菓子になりますからね。
さて、また泊まりの出張が入ってしまい、次回の更新ができそうにありません。
ですので金曜日の更新はお休みして、次回は来週の月曜日になります。
そしてこのような出張なんですが、どうやら今年いっぱい続くみたいなんですよ。
なのでこの後も何度か休載する事があると思います。
一応、あらかじめ前の回に告知できる程度には出張の日時がわかるようなのでその度ご報告はするつもりですが、そのような事情ですので度々お休みする事、なにとぞご容赦ください。